第1回 - 勤務シフトの自動作成が医療現場で難しい4つの理由
- admin4965
- 6月4日
- 読了時間: 4分
― 自動化の前に立ちはだかる“現場のリアル”とは? ―
勤務シフトの自動作成は、かねてから注目されてきたテーマです。ですが、医療現場での本格的な導入は、意外なほど進んでいません。
その背景には、「医療現場ならではの事情」があります。本記事では、勤務シフト自動作成の導入を阻む4つの壁を解説します。

1. 要件と制約がとにかく複雑
シフトを自動で作るには、まず「どんな条件で勤務を割り当てるべきか」をシステムに伝えなければなりません。
しかし、医療現場の勤務条件は極めて多岐にわたります。たとえば以下のような要素があります:
スタッフの職種・資格・経験年数
夜勤可能かどうか
チームバランス(リーダー・サブリーダーの配置)
労働基準法に基づく勤務時間の上限
個別の勤務制限や希望休
これらの条件を同時に考慮し、かつ全員分のシフトを整えるのは、非常に高度な最適化問題です。しかも、病院ごとにルールが異なるため、汎用的な仕組みでは対応しきれないケースも多くあります。
2. 現場対応の柔軟さが求められる
医療現場では、急な欠勤、患者数の急増、緊急オペなど、想定外の事態が日常的に起こります。
そのため、「一度決めたシフトを自動化する」だけでなく、変更にも柔軟に対応できる仕組みが求められます。ところが、従来の自動化ツールは「最初の計算」に特化していて、途中変更には弱いことが多いのが現状です。
また、職員のコンディションや人間関係といった「定量化しにくい要素」もシフトに影響を及ぼします。こうした“現場感覚”をシステムに反映させるのは簡単ではありません。
3. ユーザーが「使いたい」と思える設計が必要
技術的に優れていても、「使いにくい」と感じられたら意味がありません。
操作が難しい
自分たちの業務に合っていない
自動化のメリットが見えない
このように現場スタッフがシステムに不信感を持つと、導入は進まず、定着しません。さらに、初期導入費用やトレーニングの負担などが心理的なハードルになります。
4. 技術的な限界とシステム連携の課題
勤務シフトの自動作成は、AIや最適化アルゴリズムの分野でも「難問」とされています。特に大規模病院では、条件数が膨大になり、計算に時間がかかることもあります。
また、既存の電子カルテや勤怠管理システムと連携がうまくいかないことも、導入の妨げになりがちです。手入力で情報を移すようでは、自動化の意味が薄れてしまいます。
◆ それでも、自動化に挑戦する意味がある
これらの課題を前に「やっぱり手作業のほうが早い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、属人化・多重業務・調整ミスといった負担は、確実に現場に蓄積しています。
今後の人手不足や働き方改革を考えても、勤務シフトの見直しと業務の省力化は、避けては通れないテーマです。さらに最近では、要員を確保するために、多様な働き方を提供する傾向が強まっています。たとえば、育児中の職員が働きやすいように「時短勤務」や「固定シフト」を取り入れたり、部門間の応援を効率的に調整したりといった工夫が求められています。
こうした複雑で多様な働き方に柔軟に対応し、持続可能な職場環境を整えるためにも、勤務シフトの自動化は大きな意義を持ちます。
📝 今回のまとめ
医療現場のシフト作成は、ルールが複雑かつ現場依存で自動化が難しい。
急な変更や定量化しにくい要素も多く、柔軟性が求められる。
システムが使われるには「現場で使いやすい」設計が不可欠。
働き方の多様化が進む今、自動化の重要性はますます高まっている。
次回予告(第2回)
「多様な職員の属性をどう管理するか?」自動作成の第一歩は「誰が、どんな勤務ができるか?」を正しく把握すること。スキル、役職、勤務制限など、現場での管理の工夫とそのシステム化について解説します。
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